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【白】ミッシェルガンさしすせそ  この記事を含むはてなブックマーク

ミッシェルガンさしすせそ



小学生の頃、ドラゴンボールのアニメを観ていた。かなり熱心な視聴者だった。私たちの世代のほとんどがそうであったように。

水曜日の夜七時というのは、特別な時間だった。

そして俺は、とにかく30分で終わってしまうのが辛くて仕方なかった。ずっとずっと観ていたかった。

アニメのドラゴンボールというのは、とにかく話が進むのが遅かった。今なら分かる。原作に追いつかないように、ゆっくりゆっくりやっていたんだ。しかしあの頃はそんな事情は知らない。

オープニングテーマが流れ、まずは先週のおさらいが始まる。これがかなり長い。なんなら、先週の後半をもう一度やり直しているような気さえする。それでもテレビにかじりつく。「そこは知ってる、そこは知ってるんだ」と思いつつも、いつ今週の分が始まるか分からないから、片時も目を離さない。

そしておさらいが終わり、今週の分が始まる。夢中で観る。

主人公の孫悟空は気を溜め始める。

「ハァァァァ」

食卓に孫悟空の喘ぎ声だけが響いている。父と母は無言で肉じゃがを食べている。弟と俺は手に汗握っている。

長過ぎる。この人は、いちいち気を溜めるのが長過ぎる。子供ながらにそれは分かっていた。それでも不思議と嫌いにはならない。敵は、なぜだか気を溜めているのを静かに待っている。あんなに残虐なフリーザが、騎士道精神あふれる態度を取っている。

「ハァァァァァァァァァ」

悟空は気を溜める。そこで、突然画面が切り替わり、コマーシャルが流れ始める。いつものパターンだ。私は「ハァ」とため息をつく。孫悟空の十分の一にも満たないコンパクトな溜め息だ。見習ってほしい。

そうこうしているうちにコマーシャルは終わる。

「ハァァァァァ……ア・ア・ア!」

まだやっている。ポテトチップスのコマーシャル、はごろもフーズ、目薬、すべてのコマーシャルを終えても、まだ孫悟空は気を溜めている。俺は再び息をのんで見守る。

「いくぞ!」

ようやく気は溜まる。そして戦いが始まる。スピード感溢れる映像が映し出される!

そこで今週の分が終わる。

俺は愕然とする。結局、力んでいる男を眺めるだけで30分が終わっている。今思えば、これが狂気の沙汰じゃなくてなんだろう。でもあの頃はそうだった。筋肉質の男がひたすら力んでいるのを、全国の小学生は固唾を飲んで見守っていたんだ。どんなホモだって敵いやしない。
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